波長270nm前後の深紫外線(UV-C)を出力するLEDの開発競争が激しくなってきた。潜在的な市場といえる水の殺菌処理用水銀ランプの世界市場は2020年に約1600億円規模になる見込みで、現行の白色LEDパッケージ品市場の約1割の規模。水以外の殺菌市場も拡大中で、通信など新用途の可能性もある。技術開発を牽引中なのは、日本の研究機関やメーカーだ。

 「UV-C LEDの市場創出を進め、新事業の柱の1つにしていく」─。旭化成 代表取締役 副社長 執行役員の中尾正文氏は2017年春の同社の研究開発説明会でこう述べた。UV-C LEDを水の殺菌処理に利用するテレビCM「水に光を」も放映中だ。

 UV-C LEDはバンドギャップが大きい化合物半導体である窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を基にしている注1)。同社傘下の旭化成エレクトロニクス(AKM)はバンドギャップが小さいアンチモン化インジウム(InSb)などを用いた赤外線センサーや磁気センサーを主要事業の1つにしているが、それらの製造に用いるMOCVD装置などのノウハウなどを生かせるとして、UV-C LED事業に参入した。「2018年には市場が立ち上がり、2021年に世界全体で600億円規模になるとみている。AKMは2025年時点で年間300億円の売り上げを目指している」(旭化成 執行役員 UVCプロジェクト長の久世直洋氏)。

注1)AlGaNのバンドギャップはAlとGaの組成比によって3.4~6.2eV、波長にして200n~360nmの間で変わる。Gaの比率が多いほどバンドギャップは小さく、Alの比率が多いほどバンドギャップは大きくなる。
MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)=有機金属気相成長法。トリメチルガリウム(TMGa)やトリメチルAl(TMAl)などの有機金属を高温でアンモニア(NH3)などと反応させて、GaN結晶やAlN結晶を成長させる手法。