いま「MSAP」が、プリント基板業界で大きな話題となっている。従来とは異なる製法でメイン基板の線幅を大幅に微細化できる。既存技術では、量産レベルで線幅50μmが限界だったが30μm以下が見込める。今年に入って一部の大手プリント基板メーカーが量産を始めた。2017年秋に発売が見込まれる次期「iPhone」に採用されるとの見方がある。

 久しぶりにエレクトロニクス機器のメイン基板に大きな変化が訪れている。長らくメイン基板には、主にCu(銅)箔層をエッチングして配線を形成する「サブトラクティブ法(通称:サブトラ)」が使われてきた。それがいよいよ変わる。配線の微細化に向け、極薄のCu箔を土台に、その上にめっきで配線を形成する「MSAP(Modified Semi Additive Process、エムサップ)」の導入が始まったのだ。

 この動きをけん引すると噂されるのは、今年発売されるとの見方が強い次期「iPhone」。「大型の有機ELパネルの採用に伴って電池が大容量化し、その影響を受けてメイン基板の面積が半分ほどに縮小される」との観測が広がっている。そのための微細配線を実現するカギがMSAPの導入というわけだ。MSAPを用いた基板の量産がまさに始まった段階とあって、実装分野の展示会「JPCA Show 2017」(2017年6月7~9日、東京ビッグサイト)の会場で「MSAP」の文字が目立っていた(図1)。

図1 来場者であふれていた会場の受付
図1 来場者であふれていた会場の受付
「JPCA Show 2017」の開場時の受付。MSAPによるメイン基板は主に台湾・中国・韓国で製造される。その影響だけではないだろうが、全体の来場者数は前年比7%増だったのに対して、前述の3カ国からの来場者数は同38%増。特に韓国が増えた。
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