5G時代や自動運転時代の到来が迫る中、無線通信機器の基板材料にも世代交代の波がやってきた。従来のFR-4から、液晶ポリマー(LCP)やフッ素系樹脂といった新材料への移行が始まったのである。これらの材料の多くは低損失であることに加え、水分や塩分に強いため、ウエアラブル端末や体内埋め込み用の電子機器にも利用が広がりつつある。

 エレクトロニクス機器、特に無線通信機器のプリント配線基板が、長らく使われてきたFR-4やポリイミド樹脂の基板から、新材料の基板に代わり始めた(図1)。理由は大きく2つ。その1つは、次世代移動体通信システムの5G、あるいはクルマのADAS/自動運転向けミリ波レーダーなどの本格導入が迫っていることにある。

FR-4(Flame Retardant Type 4)=ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させて熱硬化させた基板の代表格。材料はガラエポなどとも呼ばれる。
ADAS(Advanced Driver Assistance System)=先進運転支援システム。ミリ波レーダーなどを用いて自動ブレーキなどを実現するシステム。
図1 5Gなどで基板はより低伝送損失のLCPやフッ素系樹脂へ
図1 5Gなどで基板はより低伝送損失のLCPやフッ素系樹脂へ
各種基板材料の特性と、5Gなど高周波無線機器に向けた材料/基板の新製品を示した。比誘電率と誘電正接の値が低いほど高周波信号の伝送損失などが低くなる。パナソニックの①は材料は非公開で、ポリイミド系の樹脂ではないもよう。村田製作所の「MetroCirc」も材料は非公開だが、特性の領域⑤を本誌推定で示した。
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 5Gでは、低くても3GHz帯、高ければ28GHz帯、ミリ波レーダーでは76GHz帯といった高周波無線を利用する見通しで、従来の基板では伝送損失や挿入損失が非常に大きくなる可能性が高いからだ。