人工知能(AI)を用いた機器やサービスの開発を支援するソフトウエア環境が、2016年から2017年にかけて続々と登場した。その提供形態は幅広く、AIを適用したい用途によって適したサービスは変わってくる。AIの活用方法が確立した分野では、開発や学習がほぼ不要な機能を利用できるが、未開拓の分野では個別の開発が必要だ。
「人工知能(AI)で社会を大きく変革するためには、開発者やユーザー、企業の参入障壁を下げることが必要。Google Cloudは、『AIの民主化』を進める」─。米Google社が2017年3月に開催したイベント「Google Cloud Next ’17」の基調講演で、同社のAI研究者であるFei-Fei Li氏はこう語った注1)。
同氏が念頭に置くのは、Google社がクラウド上で提供する既成のAPI(Application Programming Interface)のサービスだ。ユーザーが自らアルゴリズムやモデルを開発しなくても、処理したいデータをAPIに送るだけでAIの機能を使える。講演の中で、Li氏は新たに動画認識機能「Video Intelligence API」を発表し、誰もが使えるAIのサービスを拡大していくことを力説した。
3種類のサービスが登場
「AIの民主化」を目指すのはGoogle社だけではない。2016年から2017年にかけて、AIを製品やサービスに組み込みやすくするソフトウエア環境が続々登場した(図1)。Google社と同様な既成のAPIのサービスを、米Amazon Web Services(AWS)社や米Microsoft社なども提供中である。これらのAPIよりも柔軟にAIを活用できるソフトウエア基盤(プラットフォーム)の提供を始めた企業もある。国内のベンチャー企業が中心だ。国内の大手電機メーカー各社も負けてはいない。自社で蓄積したAI技術にブランド名を冠して体系化し、個別の案件ごとのシステム開発を中心に手掛けている。
各社のサービスには一長一短がある。開発が容易でコスト面でも気軽に使いやすいのは、米国の大手IT企業が提供するAPIだが、用途は汎用的なものに限られる。国内大手電機に開発を依頼する方法は最も融通が利くものの、それなりのコストが必要だ。これらの間にあるベンチャー企業らのAI活用基盤は、適用できる業務が今のところ限定的である。