「半導体のオリンピック」と称される国際会議「ISSCC」。毎年米国で開催され、2017年は、1000フレーム/秒対応の新型ビジョンチップや10mWの音声認識IC、512GビットのNANDフラッシュメモリー、1000年間データを保存できるストレージと、多彩な成果が集まった。応用別では、産業機器やIoT端末、ロボットなどの組み込み機器向けの発表が多かった。
2017年2月に開催された半導体デバイスの国際会議「2017 IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2017)」では、産業機器や自動車、通信機器などの、いわゆる「B to B(企業間取引)」の機器に向けた半導体技術の発表が相次いだ。
その中でも、技術のけん引役が民生機器から産業機器へと大きくシフトしている様子が鮮明だったのは、イメージセンサー(画像センサー)の分野である。スマートフォンの影響でデジタルカメラ市場が縮小するのに対して、自動車や産業用ロボット、監視カメラといったB to B市場は今後大きく伸びると予想されている。この成長市場に向けて、メーカー各社が研究開発に力を入れている。
イメージセンサーのセッションで注目を集めたのは、金額ベースのシェアで首位を独走するソニーグループの2件の発表である。1つは、スマートフォンに向けた、DRAM積層のCMOSイメージセンサー(講演番号:4.6)。もう1つが、産業用ロボットなどの産業機器に向けたビジョンチップである(講演番号:4.9)(図1)注1)。
同チップは主に、撮像素子と取得画像を基に特徴量抽出などを行う演算器(プロセッシングエレメント、以下PE)で構成したもの。1チップで、撮像素子から読み出した画像と、同画像から演算して得られたセンシング結果を出力できる。発表したビジョンチップは、1000フレーム/秒に対応した高速性を最大の特徴にする。1000フレーム/秒のセンシングが可能になれば、高速にロボットを駆動でき、生産性の向上につながる。