電子機器やモビリティー機器、これらを使ったサービスを左右する半導体の進化。そのトレンドをいち早く押さえられるのが、電子デバイス技術の旗艦学会「IEDM (International Electron Devices Meeting)」だ。2017年12月の発表から、Technical Program Vice Chairの高柳氏が解説する。(本誌)

 半導体のデバイス/プロセス技術に関する旗艦学会である「2017 IEDM(63rd International Electron Devices Meeting)」が、2017年12月2~6日、米国サンフランシスコ市で開催された。参加者数は1773人。この10年で最多である。

 今回、米Intel社と米GLOBALFOUNDRIES社が、CMOS先端プロセスの10nm/7nmプラットフォーム(製造基盤)をそれぞれ発表した。いずれも革新的な技術を導入したというよりは、地道な工夫の組み合わせによって微細化/高性能化/低消費電力化を進めている。当面の微細化が継続可能なことを示すのに十分な内容だった。

 ボタン電池1個で動作する極低消費電力用途では、ゲート絶縁膜を強誘電膜で実現した負性容量FET(Negative Capacitance FET、NC-FET)の発表件数が急増した。性能と消費電力を両立させるトランジスタ研究が、従来にも増して重要になっていることを示している。従来はトンネル効果を使ったトンネルFET(TFET)の研究発表が多かった。

 メモリーで目立ったのは、以前からの3次元NANDフラッシュメモリーの多層化に関する発表に加えて、次世代メモリーのReRAM(抵抗変化メモリー)で高密度化の道を開く発表だ。微細化以外の価値を付加する「More than Moore」の技術では、電気光学材料をSi(シリコン)基板に導入することで100Gビット/秒を目指す光通信用半導体デバイスの発表が目を引く。

 筆者は、東芝に25年にわたって在籍し、CMOS微細化技術の研究開発に従事した。東芝に在籍中、米IBM Research(T.J. Watson Research Center)にて、10nm未満世代までに至るCMOS微細化の共同研究を実施してきた。以下、参加者の注目を集めた発表を紹介していく。