老朽化する社会インフラの点検を効率化する切り札として、ロボット技術の導入が期待されている。国土交通省が実施する現場検証に向けて、多くの企業が開発にしのぎを削ってきた。目指すのは、点検員の近接目視や打音検査を支援することだ。現場検証や試験的導入を経て、2017年度にも現場への本格導入が始まる。
橋梁やトンネル、ダムなどのインフラ点検の効率化に向けたロボットの開発が本格化している。国土交通省と経済産業省が共同で2013年7月に設立した「次世代社会インフラ用ロボット開発・導入検討会」では、橋梁・トンネル・水中(ダム、河川)の維持管理と災害の状況調査・応急復旧という5つの重点分野を策定。これに基づき、国土交通省が土木工学やロボット分野の識者からなる現場検証委員会を設立し、インフラ点検や災害対応のロボットを公募して2014~2015年度の2カ年で現場検証を進めている。同省はこの検証で“現場で使えるロボット”を見極め、2016年度に試行的導入して2017年度には本格導入へと踏み切る予定だ(図1)注1)。
注1)国がロボットの導入を急ぐ背景には、国内の労働力不足と社会インフラの老朽化がある。例えば建設業では2030年は-36%の労働者需要のギャップが生じるとの予測がある。また高度経済成長期に整備された社会インフラが今後、急速に老朽化することが見込まれており、道路橋(橋長2m以上)は2033年に全国約40万橋のうち、約67%が耐用年数とされる50年を超える見通しだ。