IHS Markit Automotiveは2016年10月、米カリフォルニア州のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制の動向に関するセミナーを開催した。この中で、プリンシパルアナリストの波多野通氏は「ZEV規制が米Tesla Motors社のEVの価格競争力を後押しする」との見方を示した。

 世界各地で燃費規制が強化される中、カリフォルニア州は大手自動車メーカーに対して2018年モデルからZEV規制を強化する。この規制は、走行時に排ガスを排出しない電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)を一定の割合で販売することを義務付けるもの。2018年からは、これまで対象だったエンジン車やハイブリッド車(HEV)が対象から外れる。

 対策として各社は、2018年からEVを投入することで、規制のクリアを狙う。ただ、EVは電池のコストが課題で、車両価格が高ければ販売台数が限られ、規制をクリアできない。FCVを投入する選択肢もあるが、水素ステーションの整備にコストがかかるため、現実的にはEVの普及が先になる。

 既にTesla社は、EVで高級車のブランドイメージを確立し、販売台数も増やしている。EVを販売すると多くのクレジットが入手でき、規制をクリアしていない他の自動車メーカーに販売することができる(図1)。クレジットの価格は売買する企業間で設定できるので明らかではないが、Tesla社が販売したクレジットは既に約1500(モデルイヤー2014年)から約8万(同2015年)に急増している。

図1 米カリフォルニア州でのクレジットの受け渡しの関係
図1 米カリフォルニア州でのクレジットの受け渡しの関係
(a)2015年。(b)2014年。EVの販売台数増を受けて、Tesla社が他社に供給するZEV関連のクレジットは年々増えている。(出典:米CARB)
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