日産自動車は2016年12月に、同社の追浜工場(神奈川県横須賀市)で試験運用している完成車の自動搬送システムを公開した。工場内の生産エリアから専用埠頭まで、事前に設定した走行ルートに沿って無人で搬送する(図1)。完成車搬送の業務効率化を目指す。

図1 追浜工場に導入した自動搬送システム
図1 追浜工場に導入した自動搬送システム
「リーフ」をベースに開発したけん引車と、完成車を3台載せられる台車で構成する。
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 同社は2016年に、高速道路の単一車線における自動運転技術を実用化した。2018年には、高速道路の複数車線における自動運転の実用化を目指している。これに対して今回公開したシステムは自動運転技術を使うが、工場内という私有地の専用ルートを自動走行する。

 追浜工場では現在、工場内の生産エリアから専用埠頭まで、完成車を1台ずつ担当者が運転して搬送している。今回のシステムは、けん引車と完成車を3台載せられる台車で構成する。運転者なしで完成車を自動搬送し、搬送業務の効率化を狙う。

 現在、同社が工場建屋内の部品搬送に使用している「自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)」は、床に敷いた磁気テープやレールに沿って走行する。栃木工場では、無線通信システムを利用したAGVを導入している。このうち磁気テープやレールを利用するシステムは、走行ルートを変更する際に磁気テープやレールを敷き直さなければならない。栃木工場のシステムは走行ルートの変更には対応しやすいが、全てのAGVに無線の受信機を搭載し、屋内の多くの場所に無線中継機を設置する必要がある。

 これに対して、自動運転技術を利用した今回のシステムは、これらのインフラを敷設する必要がない。制御プログラムの変更によって、走行ルートの変更に柔軟に対応できる。走行ルートが異なる他の工場に導入しやすい利点もある。