日産自動車は2017年11月17日、国の規定に反して無資格の従業員が完成車の検査に関わっていた問題で、実態の調査結果や再発防止策をまとめた報告書を国土交通省に提出した。同日、社長兼最高経営責任者(CEO)の西川廣人氏と同社チーフコンペティティブオフィサー(CCO)の山内康裕氏が、神奈川県横浜市の同社グローバル本社で会見した(図)。

図 2017年11月17日に開催した社長会見
図 2017年11月17日に開催した社長会見
日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)の西川廣人氏(手前)と同社チーフコンペティティブオフィサー(CCO)の山内康裕氏(奥)
[画像のクリックで拡大表示]

 報告書によれば無資格検査は1979年から同社の栃木工場(栃木県上三川町)で行われた可能性があり、追浜工場(神奈川県横須賀市)では1989年から続いていたことが書類上で確認された。1990年代には国内工場のうち、オートワークス京都(京都市宇治市)を除く5工場で常態化していた。経営陣は今回の不正について陳謝するとともに、実態を把握できず、長期にわたる不正を許したことを認めた。

 日産は今回の不正に関する再発防止策として、各工場での完成検査の実施場所をゲートで区切り、有資格者以外の立ち入りを制限。2017年度中に顔認証による入出場管理システムを導入する予定とした上で、新たに有資格者を100人以上養成する計画だ。これに対して、国土交通省は、日産から提出された報告書の内容を精査し、日産の工場への立ち入り検査の結果と合わせて、行政処分を含めて厳正に対処するとしている。

 2017年9月に国土交通省が実施した立ち入り検査の2日後に日産は再発防止策を発表したが、日産社内からの内部通報(告発)を受けて国土交通省が再検査を実施した。監査における隠蔽行為を伴う不正検査が継続されていた事実が発覚した点について、西川氏は「工場の管理層の自覚不足」とともに「工場での現場と管理職の間で意識の壁が存在した」などとした。

 無資格検査を招いた原因としてあげられた「資格を持つ完成検査員の人員不足」や「工場や日産本社の管理職が無資格検査の常態化に気づかなかったこと」は、現在までの首脳陣の管理能力が問われる問題である。

 西川氏は会見で「現状からの挽回のために正面から(問題である)事実・習慣を裁ち切り、再発防止の対策を立てる」「目標達成をマネジメントリスクとして潰していく」とコメントする一方で、首脳陣の責任の取り方については「現場を正せばいいというものではない」としつつも、不正の継続性については「過去の責任をとることは難しい」との言葉も見られた。現状への対処は当然のことながら、日産が過去から続いてきた問題の根深さをどう捉え、企業風土に関する社内改革をどう進めていくのか、問われている。