マツダは2017年8月、火花点火(SI:Spark Ignition)ではなく圧縮着火(CI:Compression Ignition)で燃焼する次世代ガソリンエンジンを2019年に量産すると発表した(図1)。実現手段をほとんど明かさないが、同社の100を超える圧縮着火エンジンに関する特許や過去の取材などを基に本誌が予想した。
マツダは次世代ガソリンエンジンを「SKYACTIV(スカイアクティブ)-X」と名付ける。実用域のほぼすべてでスーパーリーンバーン(超希薄燃焼)を実現し、燃費性能を大きく高める。
ガソリンエンジンの圧縮着火燃焼は、かねて多くの研究があるが量産していない夢の技術。マツダ社長の小飼雅道氏は、「内燃機関革命の第2弾」と意気込む。「極限までCO2排出量削減を進める」ための基盤技術にする。
理論空燃比(ストイキオメトリー)の2倍以上に達する空気を入れた混合気を燃やす超希薄燃焼を実現し、エンジンの熱効率を高める。空気過剰率(λ)で約2を超える極めて薄い混合気は、通常の火花点火では燃えにくい。マツダは薄い混合気を燃焼室内の多点で圧縮着火(自着火)するHCCI(予混合圧縮着火)の成立範囲を広げて、超希薄燃焼を実現する。
HCCIの実現が難しいのは、そのままでは成立する運転範囲が狭いからだ。ディーゼル燃料(主に軽油)に比べてオクタン価が高くて自着火しにくいガソリン燃料は、低負荷域では筒内温度が高まらず、火が着かない。一方で高負荷域は激しく燃え過ぎる。さらに高回転域では、高速なピストンの動きに着火が間に合わなくなる。
マツダは「SPCCI(spark controlled compression ignition:火花点火制御圧縮着火)」と呼ぶ独自の技術を開発し、HCCIによる超希薄燃焼の運転範囲を実用域全体に広げる。SPCCIの実現でカギを握ると本誌が予想するのが、超高圧縮比化と点火プラグによる着火補助、EGR(排ガス再循環)、過給である(図2)。