自動運転車を使ったレース「ROBORACE」が加速している。人工知能(AI)を使ったソフトウエアが勝敗を決める新しい取り組みの全体像が、徐々に明らかになってきた。2016年8月に入り、レース車両の内部や開発用のテスト車両が公開された。

 ROBORACEは、電気自動車(EV)のフォーミュラーカーのレース「Formula E」の一部として、2016年10月に開幕する「2016-2017シーズン」の途中から開催される予定だ。同年11月にデモンストレーションを実施し、2017年にも実際のレースを始める計画である。

 AIがクルマを操るという次世代レースへの関心が高まる中、2016年8月3日にROBORACEに用いるレース車両の部品構成が明らかになった(図)。車両周囲を監視するセンサーの中核を担うのはレーザーレーダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)である。車両の前方に2個、側方に2個、後方に1個搭載した。カメラやミリ波レーダー、超音波センサーも備え、LiDARの情報を補完する。

図 車両周囲を様々なセンサーで監視
図 車両周囲を様々なセンサーで監視
自動運転レース「ROBORACE」に用いる車両に搭載する部品の構成。車両寸法は全長4800×全幅2000mmで、ホイールベースは2800mmである。車両質量は1000kg。
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 各種センサーが収集した車両周囲の情報は、米NVIDIA社の車載コンピューター「DRIVE PX2」で処理する。ROBORACEのCEO(最高経営責任者)を務めるDenis Sverdlov氏によれば、「センサーフュージョンによって精度を高める」という。DRIVE PX2は、8T(テラ)FLOPS(1秒間に8兆回の浮動小数点演算を実行)の性能を持つ。ディープラーニング(深層学習)に特化した演算では、その3倍の24TFLOPSで実行可能だ。