燃費不正問題に揺れる三菱自動車は“改心”できるのか。難局の舵取りを託されたのは、日産自動車出身の山下光彦氏。三菱の副社長に転じた同氏は就任以来、開発現場に足を運んで不正の温床をその目で確かめている。2016年8月に開催した記者会見では、三菱が抱える問題点を明らかにするとともに、今後の方向性の一端を述べた(図1)。
三菱が、プラグインハイブリッド車(PHEV)1車種の開発中止を決断した。SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)タイプで、車両寸法は「アウトランダー」と「RVR」の中間に位置する(図2)。2017年度内に投入予定だったが、開発部門の負担軽減を優先した。
それでも、三菱がPHEVや電気自動車(EV)の開発を推進する方針に変わりはない。同社の開発部門のトップに就いた山下氏は会見で、「将来を約束する車種から一つ削ったが、我々の進むべき道は電動車両だ」と宣言した。
電動車両への注力を推し進めるためにも、三菱が改めるべきことは多い。会見に先だって公開された外部有識者による燃費不正に関する特別調査委員会の報告書では、三菱の開発現場の異常な実態が明らかにされている。
三菱には、品質を保証するための仕組み「MMDS(Mitsubishi Motor Development System)」が存在する。開発フローの中に六つの「ゲート(関所)」を設け、目的の品質が達成できていなければ先に進ませないというものである(表)。だが、今回の調査では、不正のあった軽自動車「2014年型(14型)eKワゴン」の開発で「MMDSの趣旨や仕組みが完全に無視された」(報告書)ことが明らかになった。
14型eKワゴンでは燃費目標を5回も引き上げたが、その中には開発現場に相談することなく幹部が決めたこともあったという。現場の「できません」という声は無視され、開発過程でゲートを後戻りすることは一度もなかった。
2016年8月30日には、現在販売中の9車種のうち、「アウトランダー」のガソリン車を除く8車種の燃費でカタログ記載の諸元値を下回っていることが明らかになった。国土交通省が独自に燃費試験を実施して確認した。三菱は、修正値を届け出るために、販売を2~3週間停止する見込みである。