電動バイクを巡る動きが国内外で活発になってきた。ヤマハ発動機は2015年7月末に電動スクーター「E-Vino」を日本市場に投入。海外では、中国は年間2700万台の巨大市場に膨れ上がっている。東南アジアでも電動バイクの導入が進み始めた。

 E-Vinoは、ヤマハ発動機にとって第4弾となる電動バイクだ(図1)。同社はこれまで、2002年に「パッソル」、2005年に「EC-02」「パッソル-L」、2010年に「EC-03」といった電動バイクを投入してきた。継続して新型車の投入を続

図1 ヤマハ発動機の電動スクーター「E-Vino」
図1 ヤマハ発動機の電動スクーター「E-Vino」
(a)10〜20歳代の女性にターゲットを絞った。(b)リチウムイオン電池は着脱式にした。(c)右ハンドルスイッチに設けた「ブースト」ボタンを押すと、一時的にモーター出力を高められる。
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 けているものの、“成功”とは言い難い状況にある。例えば、年間1000台の販売目標を掲げていたEC-03は、実際には累計で2500台しか販売できていない。

 それでもヤマハ発動機は電動バイクに対して、「日本だけではなく世界各地から新しい製品が次々と生まれており、今後ますます世界規模で市場が拡大していく」(同社ビークル&ソリューション事業本部SPV事業部長の砂川光義氏)と期待を寄せる。

 E-Vinoは、「高価」や「使いづらい」といった電動スクーターへの不満の、解消を目指した車両である。ガソリンエンジンのスクーター「Vino」をベースに開発し、価格は23万6520円。補助金の適用で2万円の還付を受けられるため、価格差は1万円程度に収まる。

 E-Vinoの主なターゲットは、10~20歳代の女性である。都市部に生活拠点があり、半径5km圏内の移動を用途とする女性を想定して開発した。近距離移動する女性を強く意識した様子がよく分かるのが、電動スクーターの心臓部であるリチウムイオン電池だ。E-Vinoは容量500Whの電池を搭載し、1回の充電で29km走行できる。

 実は、5年前に発売したEC-03では容量700Whの電池を搭載して43km走れた。今回のE-Vinoでは「あえて電池の搭載量を減らす決断を下した」(E-Vinoの開発担当者)。高価なリチウムイオン電池の搭載量を減らすことでコストを低減したのである。

 さらに、電池モジュールはEC-03では本体に固定していたが、E-Vinoでは取り外し可能にした。女性が自宅まで持ち運べるように、電池モジュールの質量を6kgに抑えた。電池容量を少なくすると、充電時間も短縮できる。充電の制御プロトコルも見直し、3時間で満充電できるようにしている。