電動パワーステアリング(EPS)世界最大手のジェイテクトは2017年7月、技術試乗会を開催して、自動運転時代に向けたEPSの進化の方向性を示した。ステアリングホイール側と操舵機構側を機械的に分離するステア・バイ・ワイヤー(SBW)化や、冗長構成の領域拡大などを目指す。

 EPSは、トルクセンサーと角度センサーを備える。これら既存のセンサーで自動運転車の操舵システムに使えるようにした。現在の一般的なEPSでは、運転者がステアリングホイールを回転させるとトルクセンサーが検知し、EPSで足りない力を支援する。一方、自動運転車はカメラ情報などから進むべき方向が決まる。EPSは目標の進行方向に応じてモーターを制御し、自動操舵を実現する。

 特に“レベル3”の自動運転時は、運転の主導権が、運転者と車両システムの間を移動する。運転者のときはトルク制御だが、自動運転時は角度制御になる。そこで課題になるのが“スムーズな操舵”。ジェイテクトは今回、角度制御(自動運転モード)からトルク制御(運転者が主導)に(もしくはその逆に)変わるときに、ステアリング操舵に違和感がないようにシステムを設計した(図1)。自動運転中に運転者がステアリングホイールを切ると、基準以上のトルクが所定の時間以上加えられたか否かをシステムが判断し、加えられている場合は運転の主導権をスムーズに運転者に移す。

図1 自動運転時にステアリングホイールを握っているかどうかをEPSで判定する
図1 自動運転時にステアリングホイールを握っているかどうかをEPSで判定する
(a)試験車両。(b)操舵状態を検知するデモ。EPSの角度センサーやトルクセンサーを利用して実現する。
[画像のクリックで拡大表示]

 また同社はこれら既存のEPSのセンサーを使って、運転者がステアリングホイールを握っているかどうかを瞬時に検出できるシステムも開発した。圧力センサーなどを追加する必要がなく、コストを抑えられる。