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日経Automotive 2017年9月号

Automotive Report

水噴射の本命は小排気量エンジン、BMWが注力、高負荷に効いて安い

  • 清水 直茂
  • 2017/08/10 00:00
  • 1/2ページ

出典:日経Automotive、2017年9月号、pp.26-27(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 ドイツ勢が、エンジンの水噴射技術の開発に力を注いでいる。動力性能を上げながら、燃費性能と排ガス性能を高められる。水の補充作業が生じるが、比較的安いコストで実現し得る。熱心なのがドイツBMW社で、2016年に高性能スポーツ車に採用した(図1)。現在は中小型車への採用拡大を図っている。

図1 BMW社の高性能スポーツ車「M4 GTS」
直列6気筒ターボガソリンエンジンに水噴射を採用し、燃費性能を維持しつつ出力とトルクを大幅に高めた。
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 BMW社やドイツBosch社、エンジニアリング大手の同FEV社などが開発に力を注ぐ。

 BMW社は、2016年に発売した高性能スポーツ車「M4 GTS」に搭載する直列6気筒直噴ターボガソリンエンジンに、Bosch社が開発した水噴射技術を採用した(図2)。まずは少量生産車に搭載して、「顧客の反応が良い」(BMW社で水噴射を開発するBodo Durst氏)ことを確かめた。現在は他車種に採用を広げる開発を進めている。

図2 Bosch社の水噴射技術を採用
水を吸気ポートで噴射して、混合気に混ぜる。
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 水噴射で燃費性能と動力性能を高められるのは、気筒内の温度を下げて冷却損失を減らせることに加えて、ノッキング限界を進角化できるからだ。全域で使えるが、中でも全負荷での燃費性能の向上効果が大きい。全負荷におけるノッキングを防ぐために燃料を濃く噴いて冷却するリッチ燃焼の代わりに、水を噴くためである。BMW社の試算では、燃料に対して質量比で50%の水を噴射した場合、全負荷での燃料消費量が約18%と大幅に減る(図3)。

図3 高負荷域に効果がある
水噴射率を50%にすると、全負荷域の燃料消費量を20%近く減らせる。
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 水噴射は、かつて競技車で使われた。燃費性能よりも出力向上に焦点を当てた技術だった。その名残か、BMW社のM4 GTSは“競技車志向”である。水噴射によって直6エンジンの最高出力を317kWから368kWに、最大トルクを550N・mから600N・mに高めた。

 水噴射は、ユーザーに定期的な水の補充を強いる。なじみのないユーザーにそうした手間を求めるからには、「パワーアップ」という分かりやすい利点を押し出したかったのだろう。

 だがBMW社が水噴射に力を注ぐ真意は、スポーツ車の出力向上にはない。ダウンサイジングして排気量を減らしたエンジンを搭載する中小型車の出力を維持しつつ、燃費性能を高めることにある。M4 GTSに最初に採用したのは、“お試し”の意味合いが濃い。

 ダウンサイジングで排気量を小さくすると、実走行時にエンジンの高負荷域を使いがちだ。水噴射は高負荷域で効果が高いため、ダウンサイジングエンジンの実燃費性能の向上に役立つ。

 BMW社が高負荷域の燃費性能に注目するのは、今後始まる燃費や排ガスの新しい走行試験モードである「WLTC(World Wide Light-Duty Test Cycles)」や「RDE(Real Driving Emissions)」に対応するためである。現状のNEDCモードに比べて高負荷域を多く使って走る。既存のエンジンの燃費測定値が悪くなるのを水噴射で最小限に抑えたい。

 燃費性能を高める技術は多いが、同時に出力性能も上げられる技術は少ない。最近注目が集まる吸気量を減らすミラーサイクルや大量EGR(排ガス再循環)、希薄燃焼などは出力を犠牲にする。BMW社のように走りをウリにしたい車両にそのまま使いにくく、水噴射の出番というわけだ。

 水噴射は、排ガス性能の向上にも効果がある。BMW社によると全負荷でHC(炭化水素)とCO(一酸化炭素)を約9割減らせるという。一方でNOx(窒素酸化物)の削減にはあまり効かないが、これは三元触媒で対処できる。

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