ドイツDaimler社は、排気量2Lで直列4気筒の新型直噴ターボガソリンエンジン「M264」の量産を2017年秋に始める(図1)。同社が2016年に投入し始めた「モジュラーエンジン」の主役と言える機種。48V電源部品を採用して、6気筒エンジンの置き換えを狙う。

図1 今後の主役は直4ガソリンエンジン「M264」
図1 今後の主役は直4ガソリンエンジン「M264」
48V対応のBSGや電動ウオーターポンプを搭載した。
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 まずメルセデス・ベンツの「Eクラスクーペ」に搭載する計画である。直4ガソリンエンジンの刷新は、2011年に投入した「M270」以来で6年ぶり。

 最大の特徴は、直6のガソリンエンジン「M256」と直4のディーゼルエンジン「OM654」、直6の同「OM656」と多くの共通部品を使う「モジュラーエンジン」であることだ(表)。Daimler社が新しく作ったエンジンの共通設計指針「MPA(Mercedes Powertrain Architecture)」に基づいて開発した。一つの生産ラインで、4機種を造り分けられる。部品や生産のコストを抑え、今は高価な48V電源対応部品を積極的に採用した。動力性能と燃費性能をともに高められる。

表 モジュラーエンジン群の主な仕様
表 モジュラーエンジン群の主な仕様
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 このうち新型M264は、2016年のOM654から実用化し始めたモジュラーエンジン群の最後を飾る“真打ち”と言えるもの。Daimler社は今後、「6気筒エンジンは激減し、4気筒に置き換わる」(同社でM264の開発を担当したRoland Kemmler氏)とみる。ディーゼルに対する世間の風当たりが強まる中、直4ガソリンエンジンにかかる期待は大きい。

 M264は、V6ターボガソリンエンジン「M276」の低出力版の置き換えを狙って開発した。比出力は110kW/Lに達し、スポーツ用を除く量産エンジンで世界最高水準だ。最大トルクはV6エンジンと同じ400N・m、最高出力は220kWでそれを上回る。さらに燃費性能を23%高めたとする(図2)。

図2 M264の低燃費化に大きく効いた技術
図2 M264の低燃費化に大きく効いた技術
インジェクターは噴射圧が200barのピエゾ式直噴インジェクターである。V6ガソリンエンジンに比べて、ダウンサイジング化と摩擦低減、燃焼改善、48V対応BSGがそれぞれ大体1/4ずつ寄与した。Daimler社の資料を基に作成。
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