国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)は2016年5月、クルマの安全性能を評価する「自動車アセスメント」の2015年度結果を発表した。評価の差を分けたのは、衝突時に歩行者頭部への衝撃を抑える歩行者頭部保護性能だった。
衝突安全性能評価で最高得点を記録したのは、マツダの「CX-3」だ〔図1(a)〕。衝突時に歩行者へ与える傷害を抑える車体設計を採用した。他社と比べて、歩行者の頭部へ与える傷害値を小さくできた(表)。
頭部を模したインパクターを車両前面に打ち込む試験では、ピラー部を除く全体で効率良く衝撃を吸収している。同じく歩行者の頭部保護性能の点数が高かったのがトヨタ自動車の「ヴェルファイア」〔図1(b)〕。フロントフードの衝撃吸収は優れていたものの、ピラー部や、フロントガラスとフロントフードの間にあるカウル部で頭部に与える傷害値で差がついた。
一般に、フロントフードの位置が高く、エンジンルームが前後に長いクルマほど、歩行者の頭部保護性能が高くなる傾向がある。フロントフードの位置が高いと、フードとエンジン間の衝撃吸収の空間をかせぎやすいためだ。また、エンジンルームが長ければ、硬いフロントピラーや衝撃を吸収しづらいカウル部に歩行者の頭部がぶつかりにくくなり、衝撃をフロントフードで受け止めやすくなる。
2015年度の試験車はミニバンやSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)など比較的大型のクルマが多く、全体的に頭部保護性能に優れていた。その中でもCX-3が上回った要因として、マツダ商品本部主査の冨山道雄氏は「マツダ独自の『S字カウルパネル』が衝撃を効率的に吸収したため」と説明する(図2)。