無人運転車を日本の社会問題の解決に使うことを狙った実証実験が活発になっている。主役は、新たに自動車産業への参入を目指す通信・IT企業だ。大手自動車メーカーが手掛けにくい領域で、無人で走れる自動運転車を使ったサービスをいち早く作りたい狙いがある。

 通信大手ソフトバンク子会社のSBドライブは2017年3月、無人運転車を想定したバスによる実証実験を沖縄県南城市の公道で披露した。同年4月、IT企業のディー・エヌ・エー(DeNA)はヤマト運輸と共同で、無人運転技術の利用を見据えた配送車を使う配送サービスの実証実験を神奈川県藤沢市で始めた。

 2社はともに、高齢化地域・過疎地の移動手段の確保や物流事業者の人手不足の解消といった日本が抱える社会問題を、無人運転バスや同トラックを使って解決することを目指す(図1)。

図1 通信・IT企業は社会問題に着目
図1 通信・IT企業は社会問題に着目
(a)ソフトバンク子会社のSBドライブやDeNAは、自動運転サービスを早く開発するために社会問題に着目する。(b)国や自治体の協力を得やすいことに加えて、開発工数を抑えられる
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 社会問題に目を付けるのは、開発を早く進められるからだ。自動運転技術の開発に必要な公道実験には、国や地方自治体の協力がいる。社会問題の解決に役立つ実験という大義名分があれば、信用の低い新規参入企業でも国や地域の後押しを得やすい。2社は既に複数の地方自治体と提携し、国のプロジェクトにも加わっている。

 加えて、開発工数を減らせる利点がある。公共性の高いバスやトラックを中心とした配送車などを無人運転車に置き換えることを想定するため、走行範囲を限定しやすいからだ。自動運転に必要とされる高精度地図データの作成範囲を狭められる。白線や縁石の有無などの道路状態を把握する範囲も限られる。