ドイツDaimler社は2016年4月、車車間通信機能を備えた3台の大型トラックによる隊列走行システムを公開した(図1)。高速道路で隊列走行しながら半自動運転を実現するもので、車間距離を15mまで詰めることで燃費を7%向上できる。

図1 Daimler社の隊列走行システム
図1 Daimler社の隊列走行システム
3台の大型トラックが互いに通信しながら、15mの車間距離を保って自動運転で隊列走行する。燃費を7%削減でき、道路の利用効率が向上する。
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 同社は乗用車以外の大型トラックでも自動運転技術を開発しているが、主に単独の車両による自動運転に取り組んできた。2015年初夏には米ネバダ州で、Freightlinerブランドの大型トラックによる自動運転のデモンストレーションを実施した。さらに同年10月にはドイツのバーデン・ビュルテンブルク州の高速道路「A81」でトラックの自動操舵技術を披露している。

 今回は車車間通信機能を搭載した3台の大型トラックによる隊列走行システムを公開した。デュッセルドルフ近郊の高速道路「A52」で実証試験を見せた他、オランダ政府を中心とした「欧州トラック隊列チャレンジ2016」にも参加した。同チャレンジは、欧州のトラックメーカー6社の自動運転トラックが欧州各地から目的地のロッテルダムに集合するもの。Daimler社のトラックは、シュツットガルトから600kmの道のりを2日間かけて走った(図2)。

図2 シュツットガルトからロッテルダムまで走行
図2 シュツットガルトからロッテルダムまで走行
トラックは600km以上の距離を2日間かけて走行した。同走行はトラックメーカー6社による「欧州トラック隊列チャレンジ2016」の一環として実施。
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 使用したのは総質量40tクラスのセミトレーラー。これまで開発してきた自動運転用の試験車をベースに通信機能を加えた。試験車両は、最大250mの検知距離があり水平方向の画角が18度の長距離用ミリ波レーダー、最大70mの検知距離と画角30度の中近距離用のミリ波レーダーに加え、前面ウインドーに最大100mの検知距離と水平45度、垂直27度の画角を持つステレオカメラを搭載する(図3)。

図3 車車間通信システムを搭載
図3 車車間通信システムを搭載
ミリ波レーダー、ステレオカメラに加えて、5.5GHz帯を使った車車間通信システムを備え、先頭車両で撮影した映像を後方車に伝送するほか、ブレーキやアクセルといった車両情報も伝える。( )内の値は、画角および通信または検知距離。
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