熊本地震が、国内の自動車生産を直撃した。2016年4月14日午後9時26分ごろに発生した前震〔マグニチュード(M)6.5〕と同月16日午前1時25分ごろに発生した本震(M7.3)はいずれも、最大震度7を記録。トヨタ自動車は、全国で工場稼働を停止せざるを得ない事態に陥った。その一方で、早期復旧に向けた動きも目立った。

 トヨタの生産ラインが止まった。熊本地震の直後、「レクサス」の生産を担当する子会社のトヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)などトヨタ系の3工場が停止した(図1)。さらに同月18日、トヨタは国内の自動車の組立ラインのほとんどを停止させると発表した。

図1 地震の影響が自動車関連工場を直撃
図1 地震の影響が自動車関連工場を直撃
震源となった熊本市南区には、アイシン精機とルネサスエレクトロニクスの子会社の工場がある。九州にはトヨタ自動車を始めとする完成車工場もあり、一時操業停止に追い込まれた。(写真:読売新聞/アフロ)
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 トヨタは九州地方以外に24の生産ラインを持つ。順次稼働を停止し、4月23日までにトヨタグループの国内全30ラインのうち、26ラインが停止することになった。トヨタ自動車専務役員の大西弘致氏によると、今回の稼働停止で影響を受ける生産台数は「全体で約8万台強」という。調査会社IHS Automotive のSenior Analyst, Japan Light Vehicle Forecastの濱田理美氏は「宮田工場などいくつかの工場で4月28日まで稼働を休止するため、影響台数が大きくなる」と分析する。減産の影響を取り戻せるのは「2016年9月以降になる可能性がある」(濱田氏)。

 ダイハツ工業は、4月18日から24日までの間、国内工場の稼働を段階的に停止した。生産子会社のダイハツ九州の大分工場(大分県中津市)と久留米工場(福岡県久留米市)は、同月18日から22日まで稼働を停止。大分工場では、「キャスト」や「ウェイク」、「ミライース」など主力の軽自動車を量産している。久留米工場はエンジンの生産を担当。ダイハツの京都工場(京都府乙訓郡)も、同月20日から26日まで生産を止めた。自社ブランド車の他、トヨタからの受託生産車「プロボックス」「サクシード」の生産を担う工場だ。

 日産自動車は生産子会社の日産自動車九州の工場を福岡県・苅田町に持つ。地震直後は稼働を止めたが、同月18日に再開させている。ダイハツや日産の減産規模は数千台程度とみられる。ホンダは、2輪車や汎用製品などを量産する子会社の熊本製作所(熊本県・大津町)が被災した。