日産自動車は、1回の充電あたりの航続距離が550km前後に達する電気自動車(EV)を2020年までに投入する検討に入った(図1)。「エコカーの本命」として、プラグインハイブリッド車(PHEV)を推すトヨタ自動車。日産はEVの航続距離をエンジン車並みに延ばすことで、トヨタと真っ向勝負する。

図1 日産はEVの航続距離をエンジン車並みに延ばす
図1 日産はEVの航続距離をエンジン車並みに延ばす
(a)リーフの航続距離。2010年の発売から少しずつ延ばしてきた。2020年までに550km前後に達しそうだ。2017年以降は本誌の推定値。(b)2015年に発表したEVのコンセプト車「IDS」。電池容量は60kWhで、航続距離は550km程度に達する想定。
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 「十分な航続距離のEVができたときに、なぜPHEVがいるのか」──。

 日産で電動化技術の戦略をまとめる矢島和男氏(EV・HEV技術開発本部アライアンスグローバルダイレクター)は、トヨタへの対抗意識を口にする(図2)。PHEVは、日常の移動ではEV走行を主に据えて、長い距離を走るときにエンジンを併用するもの。EVの航続距離が延びて長距離走行時に充電する必要がなければ、充電用エンジンを搭載するPHEVの存在価値は低くなる。

図2 エコカーの本命はEV
図2 エコカーの本命はEV
日産で電動化技術の戦略をまとめるキーパーソンが矢島和男氏(EV・HEV技術開発本部アライアンスグローバルダイレクター)。同氏は、PHEVではなくEVが優位とする考えを淡々と語る。

 PHEVに疑問を呈する日産の根拠が、EVの最大の課題である航続距離の問題を今後2~3年でほとんど解決できるとみていることだ。

 2017年に投入する見込みの次期EV「リーフ」で、航続距離を現行の280km(JC08モード)から延ばして、350k~400km(同)にするとみられる。価格は、補助金を引いた実質価格である約360万円を維持したい考えだ。

 2020年までに、550km前後に達するEVの投入を検討する。現段階で、「現行リーフと同じ外形寸法で、荷室容量を維持したまま550km走れる試作車を開発済み」(矢島氏)だ。エネルギー密度を高めた新しい電池セルを使うことに加えて、電池パックに搭載するセルの充填密度を高めて実現する。