住友重機械工業は、自動車の鋼製車体を大幅に軽くできる成形システム、STAF(Steel Tube Air Forming)を開発した(図1)。鋼管をプレス機の金型にセットした後、通電加熱、高圧空気注入、成形、焼き入れの順に加工する。フランジの付いた連続異形閉断面の部材を高精度に成形できる。

図1 高強度のフランジ付き成形品を造れる
図1 高強度のフランジ付き成形品を造れる
(a)は段差フランジ、肉厚は1.2mm。(b)は片フランジ、肉厚は1.2mm。リア・ルーフ・レールなどでは、フランジは片側だけでいい。
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 アルミニウム合金やCFRP(炭素繊維強化樹脂)で造った車体が普及を始めた。ただし価格は高く、多数派は依然として鋼製である。鋼製車体の強度、剛性を高め、軽く造る方法としてホットプレスとハイドロフォームがあるが、一長一短である。

 ホットプレスは加熱した鋼板をプレス成形した後に急冷させる熱処理によって普通の冷間プレスより強度を上げる(図2)。ただし、板材から造るため、閉断面にするには2枚を“モナカ状”に接合する必要がある。断面形状は冷間プレスと同じで、肉厚が同じなら剛性は変わらない。

図2 各製法の位置付け
図2 各製法の位置付け
STAFはハイドロフォームより強度が高く、ホットプレスより剛性が高い。
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 ハイドロフォームは金型内で鋼管に高圧の水を注入して成形する。鋼板同士を接合する“ノリシロ”の役割をするフランジがないため、同じ空間では中空の部材を太くでき、剛性が上がる。しかし、水を使うこともあって冷間プレスの一種であることに変わりはなく、強度は高くできない。しかもフランジがないことが逆に弱点になり、他の部品と溶接しにくい。後からわざわざフランジを溶接することもある。

 “強度のホットプレス”、“剛性のハイドロフォーム”である。STAF工法は両方の特徴を兼ね備えたものだ。