文部科学省が温室効果ガスの削減に向けて策定した研究開発戦略。その下で科学技術振興機構(JST)が推進しているのが「先端的低炭素化技術開発(ALCA)」だ。2016年2月、その開発対象領域の一つとされている「次世代蓄電池」の新技術説明会が開催された。東北大学や関西大学がリチウム硫黄(LIS)電池の実現に向けた新しい要素技術の開発状況を発表した。

 ポスト・リチウムイオン電池(Liイオン電池)の有力候補として研究開発が活発なのが、LIS電池だ。今回の説明会では、その実現に向けて開発中の要素技術が幾つか紹介された。その一つが、東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授の折茂慎一氏や同講師の宇根本篤氏らのグループが開発を進める固体電解質だ。錯体水素化物を電解質とするもので、LIS電池などへの適用が期待される。

 LIS電池は、正極材に硫黄、負極材に金属Liを使う電池。硫黄は正極材としての理論容量密度が約1670mAh/gと、Liイオン電池の正極材として一般的に使われている三元系の6倍以上。また、金属Liも負極材としての理論容量密度が3861mAh/gと、Liイオン電池で一般的な負極材の炭素(372mAh/g)の約10倍。現状のLiイオン電池に対して大幅なエネルギー密度の向上が期待できる。

 ただ、LIS電池では、Liイオン電池で一般的な有機電解液を電解質に適用すると、充放電サイクルに伴って電池容量が著しく減少してしまうという課題がある。電池の充放電反応の途中で生成される硫黄とLiの中間化合物が電解液に溶け出し、それが負極側で反応して充放電に利用できる硫黄の量が極端に減少してしまうのだ。