アイシングループは、2021年をメドに簡易ハイブリッド車(HEV)用の48V電源に対応したモーターを実用化する計画だ。欧州勢が主導して始まった48V化の潮流に乗り、トヨタ以外の販売先を増やす。

 トヨタは600V前後と高い電圧に対応したモーターを2個使うHEVに力を注ぎ、48Vモーターの採用に距離を置く。アイシンは、トヨタグループの中核の一つ。48Vモーターの開発は、トヨタの戦略に一致しないように思える。

 実のところトヨタにとって、アイシンが簡易HEV部品を開発する意義は大きい。エンジン主体のHEVの存在感を世界で高め、早急な“電気自動車(EV)シフト”をもくろむ陣営をけん制できるからだ。

 中国や米国の一部の州が、EVを重んじてHEVを軽視する規制をつくる。一方でトヨタは、HEVとプラグインハイブリッド車が当面の環境車の本命と考える。トヨタ社内には、「HEVを軽んじるのはいかがなものか。費用対効果で見るとCO2排出量削減の最適解」(同社技術者)と考える向きは多い。

 48V対応の簡易HEVは、トヨタの2モーター式と異なるがHEVの一種。アイシンが48Vモーターを拡販すれば、HEVの販売台数を世界で増やすのに寄与する。CO2排出量削減にHEVが貢献することを、世界に広められる。