「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
数十人の部下を束ねる管理職です。悩みは、注意しても問題点がなかなか直らない若手社員がいることです。丁寧に言い聞かせても同じ問題を繰り返す。厳しく叱っても、その場では反省したそぶりを見せるのですが、1週間もすればすっかり忘れていたりします。注意の仕方が良くないのだろうか、叱り方がまずいのだろうかと、いろいろと考えているのですが答えが出ません。部下に言うことを聞かせる良い方法はないでしょうか。

編集部:管理者であっても部下を叱るには勇気が要る。勇気を振り絞って叱っても、部下が反省せずに同じ問題を繰り返してしまうのでは、管理者も困ってしまいます。こんなことでは、いつか職場で重大な問題が発生してしまう危険性も否定できません。

肌附氏─こうした職場や部下がいる場所で気をつけなければならないことがあります。それは、品質不良が発生する危険性です。特に現在は、製品が高度化・複雑化していて高い水準の品質を維持することが難しくなっている上に、品質に向けられる顧客の目はますます厳しくなっています。そのため、日本の製造業にとって品質不良は企業の存続にも関わる重大な問題です。