「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
設計部で課長を任されています。最近、部下からの相談で目立つものが、若手社員の伸び悩みです。現場の仕事量は日々増える一方なので、若手社員の仕事量を増やしたいというのが我々の本音です。しかし、正直対応できない若手社員がいて困っているという報告を部下から受けているのです。伸び悩みを解消する良い方法はありませんか。

編集部:今、日本企業の設計部門はどこもてんてこ舞いの忙しさではないでしょうか。

肌附氏— 確かに、設計部門に限らずどの部門も業務量は増える一方で、社員数はできる限り抑えるという傾向が今の日本企業には見られます。その分、社員1人ひとりの業務遂行能力を高めることが従来よりも求められているのでしょう。最近は上昇しているとはいえ、日本に比べて人件費が安い新興国の製造業がどんどん力を付けています。コスト競争力で不利な分、日本企業の管理者が社員の育成スピードを高めて対抗したいと考えるのは理解できなくはありません。