「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み

これまで生産技術部門にいたのですが、この春に経営企画部門に異動になりました。生産現場で培ったものづくりの視点を会社の経営に生かしたいと張り切っています。経営の一端を担うに当たり、参考にしたいのはトヨタ自動車です。多少の景気変動などの影響は受けながらも、持続的な成長を続けている理由を知りたいと思っています。「本当のところ」を教えてもらえませんか。

肌附氏― トヨタ自動車の強さについては、多くの書籍があり、雑誌などで特集が組まれてきました。トヨタ自動車の社員やOBから見ても「よく分析しているな」と思うことがある。それでも、まだ核心には触れていないなと感じることも事実です。

 トヨタ自動車の強さの源泉は「人」です。働く人のモチベーションを高めてやる気を引き上げ、ものづくりと経営の基盤にしているのです。では、どのような人を理想としているのか。それは、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎さんです。

 2017年3月末に、TBSテレビが喜一郎さんをモデルとしたドラマを放映しました。主役を演じた俳優の佐藤浩市氏が迫真の演技を見せました。国産自動車を生み出することに人生を、いや命を懸けた喜一郎さんの情熱と考え、言動がトヨタ自動車の「DNA」であり、競争力の原点なのです。そして、このDNAを社内に伝承し続けていることが、トヨタ自動車の持続的な成長を支えているのです。

編集部:このコラムをはじめ、肌附さんが一貫して語っているのは、つまり、喜一郎さんを理想として社内に引き継がれたDNAというわけですね。