「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
会社の主力製品の開発部から新規事業を企画する部署へ異動することになりました。時代や市場の変化によって既存事業だけでは安泰ではないという危機感から新設された部署です。しかし、何を手掛けるかも、どのように進めていくかも、これから自分たちで考えていかなければなりません。新規事業を成功させる秘訣のようなものがあれば教えてもらえませんか。

編集部:IoT(Internet of Things)に人工知能(AI)、3Dプリンター、ロボティクス、そして自動運転…。従来にない革新的な技術が登場し、産業も市場も人々のニーズも急激に変化しようとしています。こうした中、いつまでも既存事業に頼るのではなく、新規事業に挑戦する日本企業は増えているようです。でも、今や世界的な企業となったトヨタ自動車には無縁の話ですね。

肌附氏—そんなことはありません。確かに、今は自動車を造っていますし、しばらくの間は自動車が事業の柱であることでしょう。しかし、いつまでも自動車が主力事業であり続けられるとは限りません。現に、トヨタ自動車が生まれる前の豊田自動織機製作所時代の主力事業は織機でした。いつまでも織機だけにこだわっていたら、今のトヨタ自動車はなかったのです。

 そうした危機感をトヨタ自動車は今なお持ち続けています。例えば、トヨタグループ(以下、トヨタ)が「芝」を販売していることを知っていますか。トヨタルーフガーデン(本社愛知県みよし市)という会社があり、その会社ではバイオ技術を駆使して「伸びない芝」と呼ばれる製品を生み出し、ヒット商品にしました。今回は、同社代表取締役の斉藤義幸さんをお招きしました。実際に新規事業に挑んでいる人から回答した方が説得力があると考えたからです。

編集部:斉藤社長、よろしくお願いします。まずは、トヨタルーフガーデンはどのような会社なのか教えてください。