編集部:トヨタ自動車は重大危機への対応力に優れていると言われます。事実、2008年にはリーマン・ショック、2009年には大規模なリコール問題、2011年には東日本大震災に見舞われながら早急に立ち直りました。
最近では、2月8日に発生した愛知製鋼の爆発事故の影響で、トヨタ自動車の16の国内完成車工場が生産停止に追い込まれましたが、1週間ほどで生産を再開しました。これにより7~8万台の生産が遅れたと言われていますが、この規模であれば増産対応で比較的早期に挽回できるのではないでしょうか。
事故だけではなく天災など不可避の事態が発生して工場が止まる可能性はゼロではありません。こうした重大危機に陥った際に、トヨタ自動車の工場はなぜ素早く生産を再開できるのでしょうか。
肌附氏— このコラムの第1回(2014年7月号)でも述べたのですが、まずは前提として重大危機を乗り越えるための基盤がトヨタ自動車はしっかりしているのだと思います。それは、「あるべき理想の姿」に向かって常に改善を考えて実行できる「改善マインド」を持った社員の集団になっていることです。
従って、重大危機と呼ばれる大きな問題が生じてもそれを解決すべく立ち向かっていく強い気持ちを備えています。こうした改善マインドを持った人づくりを絶え間なく行っているため、重大危機が発生した時でも素早く復旧に向かって突き進めるのです。
そして、この前提の上に、重大危機で混乱した状況を解決に導くノウハウを備えていることがトヨタ自動車の特徴です。かつて私もリーダーとなって重大危機を乗り越えたことがあります。
編集部:重大危機が発生した際のトヨタ流のマネジメント手法とはどのようなものなのでしょうか。