編集部:「和を以て貴しとなす」という言葉が今回の悩みから頭に浮かんできました。私は記者になって20年ほどになりますが、駆け出しだったころから、「社員の和が当社の力の源だ」と取材で熱く語る日本企業の経営者や管理者、社員の方に数多く出会ってきました。
しかし、2000年前後でしょうか、成果主義に基づく評価が台頭してきた頃から、「和よりも個人の能力向上」という考え方が目立ってきたように感じます。ひょっとすると、今「和の力」などと言ったら時代遅れだとみなされることがあるかもしれません。トヨタ自動車も成果主義に基づく評価制度を取り入れていますよね。
肌附氏— ええ、もちろん導入しています。
編集部:しかし、取材をしている限り、個人主義の印象は受けません。逆に、社員の団結力の強さが他社と比べて際立っているように感じます。例えば、取材で質問すると役員から管理者、そして一般社員まで、まるで判で押したように同じ回答を得られたことが何度もありました。ここにトヨタ自動車の団結力の強さが表れている気がします。