「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
品質管理部門のリーダーを務めています。製品の機能が高度化し、かつ種類が増えていることで、現場の業務は忙しくなる一方です。検査によっては専門化が進んでいて個々の社員のスキルは高まっているのですが、チームワーク力が弱まっているように感じています。これでは予期せぬトラブルが生じた際などに、部門全体で乗り越えられるのか心配です。何か対策はありませんか。

編集部:「和を以て貴しとなす」という言葉が今回の悩みから頭に浮かんできました。私は記者になって20年ほどになりますが、駆け出しだったころから、「社員の和が当社の力の源だ」と取材で熱く語る日本企業の経営者や管理者、社員の方に数多く出会ってきました。

 しかし、2000年前後でしょうか、成果主義に基づく評価が台頭してきた頃から、「和よりも個人の能力向上」という考え方が目立ってきたように感じます。ひょっとすると、今「和の力」などと言ったら時代遅れだとみなされることがあるかもしれません。トヨタ自動車も成果主義に基づく評価制度を取り入れていますよね。

肌附氏— ええ、もちろん導入しています。

編集部:しかし、取材をしている限り、個人主義の印象は受けません。逆に、社員の団結力の強さが他社と比べて際立っているように感じます。例えば、取材で質問すると役員から管理者、そして一般社員まで、まるで判で押したように同じ回答を得られたことが何度もありました。ここにトヨタ自動車の団結力の強さが表れている気がします。