現在、絶好調の富士重工業。北米市場で販売を大きく増やしている。ただ2020年以降を見ると不安な面が大きい。新興国攻略の道筋が見えない。電動化の遅れも気になる。同社の今後を見通す。 (本誌)

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 富士重工業の世界販売台数は、2010年に64万台だった。それが2019年に100万台を超えて1.5倍超に達する見込みだ(図1)。増加分の大半が、北米市場におけるもの。同市場における「スバル」ブランドの人気は高く、それほど値引きしなくとも売れている。生産が追い付かないほどである。

図1 富士重工業の成長は2019年まで
図1 富士重工業の成長は2019年まで
2019年に100万台に達し、その後は減少する。2015年までは実績値、2016年以降はIHS Markit Automotiveの予測。
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 従来の水平対向エンジンを搭載した4輪駆動車という特徴に加えて、ステレオカメラを使った予防安全装置「アイサイト」が人気を博す。加えて、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)が売れる市場環境の追い風に乗った。北米ではもともと、北部の降雪地域で強かった。最近は、カリフォルニア州をはじめとした暖かい地域でも売れている。

 全方位に攻める考えを捨てて、強みのあるSUVを中心とした技術開発に力を注ぐ選択と集中が功を奏した。日本では軽自動車の生産から撤退。販売地域では、各社が力を注ぐインドに進出しない選択をする。

 ただし、販売台数が増えるのは北米市場が好調な2019年までになりそうだ。2020年以降の成長戦略は、不透明な状況にある。長年の課題である新興国戦略を早急に進めねばならない。