米Ford Motor社が、販売台数を堅調に増やしている。車種とブランドを絞り込む戦略が奏功し、米国の金融危機を乗り切った。クルマのIT化では先頭を走る。課題は、高級車市場で出遅れていることだ。(本誌)

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 乗用車販売台数で世界6位の米Ford Motor社は、米系自動車メーカーの「優等生」だ(図1)。2008年のリーマンショックで米GM社や同Chrysler社は経営破綻し、米政府の支援を仰いだ。最終的にChrysler社は、イタリアFiat社(当時)の傘下に加わった。

図1 Ford社の世界乗用車販売台数の見通し
図1 Ford社の世界乗用車販売台数の見通し
今後も堅調に販売台数を増やす見通しだ。2018年に約650万台に達するだろう。
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 一方、Ford社は政府の支援を受けず、自力で立て直す。その過程で「Aston Martin」「Volvo」「Jaguar-Land Rover」「Mercury」など多くのブランドを手放した。今では「Ford」と「Lincoln」を残すのみ。大がかりな選択と集中で収益性を高め、荒波を泳ぎ切った。

 米国民は、自助努力を重ねるFord社を好意的に見ている。米国で販売が好調な背景には、市場が堅調なことはもちろんだが、米国民の見えない後押しもあるだろう。米国の販売シェアは、リーマンショック以前の水準を超えるまでに伸びている。

 技術面では、アルミニウム(Al)合金を多く使って車体を軽くすることや、携帯端末との連携を重んじた車載情報装置に力を注ぐ。課題は、高級ブランドと位置付けるLincolnの販売が伸び悩んでいることだ。高齢化した顧客の若返りを図る策の導入が急務である。