イラン自動車市場に注目が集まる。欧米諸国はいよいよ、経済制裁を本格的に解除する見込みだ。主役を担うのが、同国最大シェアのIran Khodro社。同社を分析しながら、イラン市場の今後を占う。(本誌)
2015年7月、欧米中心の6カ国(国際連合安全保障理事会常任理事国の米国、英国、フランス、中国、ロシアに加えてドイツ)は、イランの核開発に対する協議で最終合意した。欧州各国とロシアは制裁解除を既に宣言。米国議会が承認すれば、2016年内に経済活動への制限はほとんどなくなる。自動車メーカーは、イランの企業とカネやモノを自由にやりとりできる。
イランへの投資は、まずエネルギー関連で始まるだろう。原油の埋蔵量は世界4位、天然ガスは同1位の資源大国だ。それに次ぐのが自動車産業である。イラン政府は、資源で稼ぎながら自動車産業を育成する青写真を描く。イランの自動車販売台数は、2014年に110万台弱(図1)。2021年には160万台超に達すると予測する。
イラン自動車市場で、世界の自動車メーカーがとりわけ熱い視線を注ぐのが、同国最大のIran Khodro(イランホドロ)社だ。「Khodro」はペルシャ語で「自動車」を意味し、資本の半分近くを政府が出資する事実上の国有メーカー。シェアは4割近くに達する。その動向が、イランだけではなく中東全体とアフリカ市場を左右する。