一時は忘れかけられたエンジンの気筒休止機構が、再び注目を集め始めている。大排気量のエンジンを中心に搭載されてきた同技術が、1.0Lクラスの小型エンジンでも必要になってきたからだ。気筒を休止させる方法は3種類に分類できる。

 エンジンの気筒休止機構は、一部のシリンダー(気筒)の燃焼を休止する機構である(図1)。燃料噴射を停止し、点火をさせないことで特定の気筒で燃焼を止め、燃料の消費量を減らす。さらに、ポンピングロスの低減も期待できる。発想は1980年代にさかのぼる。古くは米国車のV型8気筒エンジンや、2サイクル3気筒の軽自動車でも気筒休止機構を搭載した例がある。

図1 気筒での燃焼を止める
図1 気筒での燃焼を止める
写真はAudi社の例。気筒休止を実現する機構は、特定気筒への燃料供給停止や独自のバルブリフト機構を利用してバルブ駆動を停止するものなど様々ある。なお、ピストンは動き続ける。
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 大排気量で多気筒のエンジンほど出力に余裕があり、負荷の低い走行領域では気筒を休止しやすい。このため、これまではV型8気筒やV型12気筒のエンジンに搭載し、8気筒を4気筒に切り替えたり、12気筒を6気筒にしたりするといった例が大半だった。

 最近では、気筒数の少ない小排気量エンジンでも同機構の採用が進み始めた。例えば、ドイツVolkswagen(VW)社は2012年に発売した7代目「ゴルフ」で、気筒休止機構を備えた排気量1.4Lの「TSI」エンジンを搭載した。2016年11月に発表したゴルフの全面改良によってエンジンは排気量1.5Lの新型品へと置き換えることになったが、新エンジンでも引き続き気筒休止機構を設けている。低負荷域で2気筒分の吸排気弁を閉じ、燃料を噴射しないようにした。

 米Ford Motor社は、排気量1.0Lの3気筒エンジン「EcoBoost」の更なる燃費改善策の一つとして気筒休止機構を検討する。道路上での実験では同機構により燃費が最大6%向上したという。ダウンサイジングやアトキンソンサイクルのエンジン、ハイブリッド車の普及によって、エンジンの効率向上が強く求められるようになってきた。一時は忘れかけられた気筒休止機構が、再び注目を集めつつあるのだ。