CMOS技術を適用したチップの登場によって、自動運転などで使う77GHz帯ミリ波レーダーの小型化、低コスト化が進む。長距離検知だけでなく、車両周辺の短距離検知にも適用できる。米Texas Instruments(TI)社が、同レーダーの最新動向や今後の進化の方向性などを解説する。 (本誌)

 先行車追従(ACC)などの快適な運転を支援する機能や自動緊急ブレーキなどの安全機能から、歩行者検出や全方位センシングなどの新しい機能まで、先進運転支援システム(ADAS)は、ここ5年で急速に進化してきた。その背景には消費者の安全に対する関心の高まりや法規制の影響によって、予防安全機能を強化しようとする自動車メーカー各社の動きがある。

 アイルランドの調査会社であるResearch and Markets社の「世界のADAS市場予測」によると、ADASを搭載する車両の出荷台数は、2022年までに6000万台に達するという。またADASを構成する部品の出荷数は、2016年の2億1800万個から、2025年には12億個に増加すると予測する。

 ADASでは様々なセンシング技術で車両周辺のデータを取得し、プロセッシング機能によってそのデータを処理・解析して必要な情報を取り出すと共に、疑似信号の排除といった処理を行う。さらに、得られた情報を運転者に通知したり、車両の制御に反映させたりする通信機能も内蔵する。このようにADASは、自動車システムの自動化や機能向上を図ることで、高い安全性と優れた運転機能を実現する。そして、半導体メーカー各社が提供する車載用エレクトロニクス製品が、これらの機能を支えている。

 ADASは将来、半自律型あるいは完全自律型の自動運転システムに進化する。現行のADASは、SAE(米自動車技術会)が定める「レベル1」の自動運転システムであり、「レベル2」の自動運転システムも実用化されている。レベル2の自動運転とは、加減速や操舵などの複数の操作をシステムが行う状態のこと。操作の主体は運転者である。「レベル3」とは全ての操作をシステムが行う状態のことで、非常時などを除いて操作の主体はシステムが担う。「レベル4」では全ての操作をシステムが行い、運転者は操作に関与しない。「レベル5」では無人運転の状態になる(図1)。

図1 SAEが定義する自動運転のレベル
図1 SAEが定義する自動運転のレベル
自動化していない「レベル0」から無人運転の「レベル5」までの6段階に分かれる。
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