車載ソフトウエアのプラットフォーム規格「AUTOSAR」と情報系ネットワーク規格「MOST」の共存を可能にする作業が進んでいる。そのアプローチには大きく分けて二つある。作業を主導するドイツBosch社の子会社であるETAS社が、共存方法などについて解説する。(本誌)

 クルマの電動化が進み、高級車では1台当たり100個以上のECU(電子制御ユニット)が使われている。大衆車でも1台あたりのECUの搭載数は、50個に達している。ECU統合を容易に行うことができれば、少ないECUで多くのアプリケーションを制御でき、ハードウエアの点数を減らせる。ソフトウエアの再利用や共通化も容易になる。

 車載分野でこの再利用を支援するのが、「AUTOSAR(Automotive Open System Architecture)」というソフトウエアプラットフォーム規格である。ドイツのBMW社やDaimler社、Volkswagen(VW)社、Bosch社、Continental社のほか、米国のFordMotor社やGM社、フランスのPSA Peugeot Citroenグループ、日本のトヨタ自動車などが中心になって、規格の作成作業を行っている1)

 規格作成を行う組織「AUTOSAR Development Partnership」には、200を超える企業・団体が参加している。ドイツなど世界の自動車メーカーが、従来型の電気/電子(E/E)システムや、近年急速に普及している先進運転支援システム(ADAS)など多くの分野でAUTOSAR規格を採用している。

 一方、「MOST(Media Oriented System Transport)」は、大容量のマルチメディアデータを高速伝送するために一般的に用いられている車載ネットワーク規格である。今回はAUTOSAR規格でカバーする範囲だけでなく、その周辺分野でもいかにしてAUTOSAR規格とMOST規格を共存させるかを見ていきたい。