1971年の創刊以来、日経エレクトロニクスはエレクトロニクス関連の動向を取材し、それを通じて得たさまざまな情報を、本誌やWebサイト(日経テクノロジーオンライン)の記事として提供してきました。ただ、実りある取材ができたときほど、記事だけというアウトプットに物足りなさを感じることも事実です。テキストや図表では伝えきれないものがあるからです。例えば開発者がその技術にかけた熱い思い、最終成果に至るまでの数々の試行錯誤、そして出口が見えず悶々としていた中に差し込んできた一筋の光明──。そんな話を伝えたい時、私たちはイベントを開催して、開発者本人から直接語ってもらうようにしています。

 直近では12月5日に都内で開催した「日経エレクトロニクス主催 パワー・エレクトロニクス・サミット2017」があります。当日は、用意した会場が開演10分前に満席になるほど、多数の方にご来場いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 このイベントの目玉企画として「NE主催 パワー・エレクトロニクス・アワード 2017」(NEパワエレアワード 2017)の贈賞式と受賞者講演を行いました。同アワードは、日本の大学の理工系研究室とエレクトロニクス分野のスタートアップ企業の研究開発を応援するもので、昨年は「アナログ」をテーマに開催致しました。そして今年のテーマとして選んだのが「パワエレ」です。

 なぜいまパワエレなのか。それはこれまで、どちらかといえば「縁の下の力持ち」的な存在だったパワエレが電動化の波に乗り、表舞台に出ようとしているからです。特に、EVを筆頭に、モビリティー(移動手段)の電動化は待ったなしの巨大なうねりになりつつあります。

 こうしたとき、最も求められるのは技術革新です。今回のNEパワエレアワード 2017では、「革新性」「実用化の可能性」「産業へのインパクト」に優れた3つの研究室の成果に賞をお贈り致しました。審査をお願いした委員の方からは「日本企業はパワーデバイスを作ることについては世界をリードしている。デバイスを使う技術で新機軸の技術を保有できれば、パワエレの分野でもう一歩リードできる」とのコメントをいただきました。

 その未来の実現に向けて、本誌は今号もパワー関連の記事をお届けします。特集「全固体電池」、解説「クルマで始まるモーター革新」、ニュース「三菱電機、パワーデバイスで攻勢」をご一読ください。