日経エレクトロニクスの創刊45周年記念として2016年6月号に掲載した特集「人工知能、超人間へのロードマップ」は、多くの読者の方からご好評をいただきました。その後も人工知能(AI)関連の話題は引きも切らない状態で、弊誌では、毎号と言っていいほど、AIの記事を掲載してきました。

 中でも特に動きが激しいのが、AIを処理する半導体の分野です。例えば、半導体世界最大手の米Intel社、同2位の韓国Samsung Electronics社が2016年後半に相次いで、深層学習用の半導体を開発する企業の買収や出資に踏み切りました。各社を突き動かすのは、巨大な潜在市場への期待です。調査会社の調べによると、AI向けCPUの市場は2016年の11億米ドル超から2025年には574億米ドル超へと、50倍以上に成長する見込みです。「ムーアの法則」の減速が鮮明になる中、半導体業界の救世主とも言える市場がAIというわけです。まさに大競争が始まったAIチップの開発最前線をまとめたのが、特集「AIチップ創世記」です。前述の「人工知能、超人間へのロードマップ」を担当した今井編集委員が米国出張も敢行し、AIチップの今後を見通しました。

 これと並んで、是非お読みいただきたいのが、特集「インクからエレクトロニクス」です。AgインクやAgペーストなど、配線や回路を印刷する材料の技術開発が活発になってきました。従来の課題を解決する形で導電性インクの開発が進んだことで想定用途が拡大し、ベンチャー企業や異業種からの参入が相次いでいます。導電性インクを利用して多層配線基板を印刷可能な3Dプリンターも登場し、まさに「インクからエレクトロニクス」の実現が間近に迫っています。担当は野澤記者です。当初、この企画は6-8ページの解説記事を想定していましたが、取材を進める内に、面白い話が続々と集まり、計17ページの特集記事に格上げとなりました。

 もう1つ、ご紹介したいのが、2016年11月8日~11日にドイツ・ミュンヘンで開催された、産業用エレクトロニクスの国際展示会「electronica 2016」の詳報です。日経エレクトロニクス/日経テクノロジーオンラインでは、2名の記者を現地に派遣しました。本記事では、取材に当たった2名の記者が今回のelectronicaのトレンドに沿って紹介してきた内容を総括しました。今号には誌面の都合でエッセンスのみを6ページで掲載しましたが、その3倍程度の分量の総括記事を、デジタル版のみでお読みいただける読者限定の形でお届けしています。ご期待ください。