2016年9月下旬に韓国に出張しました。量販店の電子機器コーナーを訪れると、あるブースだけが異様な静けさに包まれていました。同年8月に発売された韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「Galaxy Note7」のブースです。そこには、デモ用に同端末が3台、電源コードにつながれた形で置かれていましたが、3台ともに端末の電源はオフになっていました。しかも製品をアピールするスペック表も価格表もない状態。量販店におよそ似合わないその光景にただならぬ雰囲気を感じました。実際、Galaxy Note7は、8月19日の発売以降、2次電池の発火問題に伴う2度のリコールを経て、10月10~11日に販売・製造中止に追い込まれました。

 エレクトロニクス業界を揺るがしたこの発火事故は、Samsung社固有の問題であって、他の機器メーカーには関係のない話なのか─。この核心に迫るべく、緊急解説として「『Galaxy Note7』発火問題の教訓」を掲載しました。2016年11月7日現在、韓国政府機関による調査を含め、問題の原因は解明されていません。しかし、取材を通して浮かび上がってきたのは、「同じような問題がいつ他社の端末で起きても不思議ではない」ということです。今回の発火事故が電子業界にどのような教訓を残したのか、解き明かしました。

 特集記事も重厚な2本を揃えました。特集1は「IoTの通信、BLEが独走」です。IoT(Internetof Things)を実現する無線通信技術として、ここにきてBluetooth Low Energy(BLE)が急速に台頭しつつあります。身の周りのモノにビーコン発信機能を持つBLEタグを付け、探し物や落し物の探索などに使う用途です。米国を中心に既に1000万個超のBLEタグが出荷済みで、BLEタグ・ベンダー間の競争も激化しています。今後順調に開発が進めば、そう遠くない将来、すべてのヒト・モノにBLEタグが付く世界が現実のものになりそうです。

 特集2「“物流革命”が迫る脱メーカー」では、日経エレクトロニクスにとって目新しい分野である「物流」に焦点を当てました。米Amazon.com社などのEC(電子商取引)の凄まじい進化により、「速く・安く・融通が利く」物流インフラが構築されつつあります。こうした物流インフラの進化は、電機メーカーに「ハード主体」から「サービス主体」へと事業変革を迫ります。モノが欲しい時に届けば、モノの所有が必要なくなるからです。こうした未来を見据え、例えばパナソニックは「家電のない家」の提案を始めています。どうぞご一読ください。