「さらば、ムーアの法則」。日経エレクトロニクスの2015年4月号の特集タイトルです。半導体の微細化のペースが、技術世代が32nmを迎えた頃から鈍化しており、その後急ブレーキがかかる見込みとの内容でした。実際、ここ数年、製造技術の微細化は停滞し、将来展望を失っていました。

  最近、その流れが変わりそうな兆候が見えてきました。10年以上前から期待されながら、鳴かず飛ばずの状況が続いてきたEUV(極端紫外線を用いた露光技術)の量産化に現実味が出てきたのです。これにより、半導体の受託製造企業(ファウンドリー)各社が、ここ数カ月の間に、一斉に微細化のロードマップを更新しています。もちろん、EUVの量産化に向けた課題が完全になくなったわけではありません。それでも、半導体業界の「空気」が明らかに変わりました。EUVの実用化により、ムーアの法則が少なくとも今後10数年、具体的には“1.4nm世代”まで続くとする見方すら出てきました。

 では、一体どのように空気が変わったのか。今号の特集「ムーアの法則、EUVで再起動へ」に最新動向をまとめました。担当したのは、技術系記事の「深さ」、「濃さ」に定評のある野澤記者です。同記者が緊急渡米し、半導体技術の展示会「SEMICON West 2017」などを取材。今、半導体の先端技術がグローバルでどう動いているのか、詳しくお伝えします。

 技術革新が起きているのは半導体分野だけではありません。電池分野でも大きな動きが2件ありました。1つは、現行の主力技術であるLiイオン2次電池で久しぶりに起こった製造革新です。具体的には、三洋化成工業が商業化を検討している新型Liイオン2次電池がそれです(Hot News「Liイオン2次電池に製造革新、樹脂で電極構造や集電体を実現」)。この新型電池には、Liイオン2次電池の電極構造体および集電体、セパレーターのすべてを樹脂で構成できるという特徴があります。これにより、フレキシブルな電池を作製したり、電極の面積を容易に大型化でき、大きなセルを実現できるようになります。これまでにないLiイオン2次電池が実現される可能性が出てきました。

 電池をめぐるもう1つの技術革新は、ポストLiイオン2次電池をうかがう全固体電池で起こりました。東京工業大学の菅野了次氏の研究グループが、材料・製造コストを大幅に引き下げられる新しい電解質材料を発見したのです(Hot News「全固体電池を大幅に安く、東工大が新型電解質材料」)。電気自動車などへの全固体電池の採用の前倒しが見えてきました。