2016年7月中旬から下旬、電子業界では大型企業買収が相次ぎました。いずれも本号で詳しくお伝えしていますが、先陣を切ったのはドイツInfineon Technologies社です。パワー半導体事業の強化に向けて、米Cree社のパワーデバイスとRFデバイスの部門「Wolfspeed」を8.5億米ドルで買収すると、7月14日に発表しました(本号詳細)。

 7月18日には、誰もが驚く買収案件が発表されました。ソフトバンクが英ARM社を3.3兆円で買収することで合意した案件です。本件については、これまで技術的な視点からの詳しい分析はほとんどなされてきませんでした。そこで本号では、緊急レポート「孫正義氏の野望をARMは叶えられるのか」を掲載。特に技術的な視点から、IoT向けの半導体の主導権争いでARM社が抜け出せるのか、競合企業の動向も含めてARM社が今後直面する課題などを浮かび上がらせました。

 企業買収の波はこれで終わりませんでした。7月27日には、米Analog Devices社が米Linear Technologies社を約148億米ドルで買収すると発表(本号詳細)。アナログ半導体の優良企業同士の統合案件に電子業界は揺れました。

 これで終わりと思いきや、翌日の7月28日にはまたも衝撃的な案件が明らかになります。ソニーが村田製作所に電池事業を譲渡することを発表したのです(本号詳細)。1991年に初めてLiイオン電池を市場に送り出したソニーの決断については、次号で同社のR&D責任者である執行役副社長の鈴木智行氏のインタビューをお届けします。

 今号の特集1「電機発、“親離れ”への挑戦」は、事業譲渡や企業買収と関連する内容です。電機メーカーはここ数年、パソコンや家電事業などを分社化してきました。構造改革の一環ですが、分社化された側の企業は、逆にチャンスととらえています。電機メーカーの傘の下にいたが故に、成長市場への参入を妨げられたり、本来の技術的な強みを生かしにくかった面があったことは否めません。こうした呪縛から脱し、“親離れ”することで世界市場で力強く戦う企業の取り組みをまとめました。

 特集2「見えてきた5Gの全貌」もお読みいただきたい記事です。第5世代移動体通信「5G」は、従来の2G~4Gから大きく変わります。超高速通信に加えて、自動運転車やロボット制御、さらにはIoT関連技術にそれぞれ最適化した仕様を盛り込み、2020年代の基幹ビジネスを支える通信インフラになる見通しがハッキリしてきました。