米Apple社のBluetoothイヤホン「AirPods」を利用する機会がありました。このAirPodsは、「iPhone 7」でイヤホンジャックを廃止したことも手伝い、発売以降、品薄状態が続く人気商品です。2017年5月10日時点で6週間待ちとか。

 このAirPods、使ってみると人気の理由が分かりました。ペアリングが容易というのは事前のイメージ通りでしたが、左右のスピーカーをつなぐケーブルがない完全ワイヤレス(true wireless stereo:TWS)であることが思いの他、快適です。そして、それ以上に重宝するのが、iPhoneなどに格納した音楽の再生中にAirPodsの片耳だけでも外すと、その瞬間に音楽が一次停止になり、装着すると再び音楽が再生される機能です。加えて、Siriを利用した音声による音量調整や曲変更なども可能です。一連の高機能には、AirPodsが搭載するセンサーや専用設計チップなどが大きな役割を果たしています。まさに耳の中に小さなコンピューターが入っているわけです。

 ただし、AirPodsは氷山の一角に過ぎません。現在、米国などで出荷されているTWS製品の数だけで40超にのぼります。開発中のものも含めると60を超えるという過熱ぶりです。本号の特集1「耳の中にコンピューター」では、TWS製品を含めた、いわゆる「ヒアラブル」端末をめぐる開発の最前線と今後の技術進化の方向性を独自の分析でお届けします。

 この特集と連動する形で、TWS製品を含む新世代のBluetoothイヤホンの市場動向に関する分析記事も掲載しています(Emerging Biz「中国勢がイヤホンを席巻、売り方と造り方を解剖」)。中国勢が世界市場を席巻しつつあり、その売り方とサプライチェーンを解き明かします。

 もう1つ、本号で是非お読みいただきたいのが、特集2「半導体 異種格闘技戦」です。アナログ半導体とデジタル半導体は事業と開発の手法が全く異なります。これまで別々の道を歩んできたこれら2つの業界が同じ土俵で競い始めました。微細化を突き進めるデジタル半導体メーカーが、アナログ回路を搭載し始めているからです。16nm世代以降の最先端の半導体プロセス技術をアナログ回路にも適用し、そのノウハウを蓄積してアナログ半導体メーカーを追い上げる構図が鮮明になりつつあります。攻めるデジタル半導体メーカーに対して、アナログ半導体メーカーはどう対処するのか。外資系大手半導体メーカーの幹部への取材を交えて、将来を見通します。