私は、米Apple社の「Apple Watch」を毎日利用しています。最も重宝しているのが、スマートフォン(スマホ)への電話の着信をApple Watchで知らせてくれる機能です。私自身は、スマホの着信音やバイブレーションが好きではありません。会議などで周りが迷惑するからです。Apple Watchを使えば、スマホをサイレント状態にしながら、電話の着信時に、腕時計がコツコツコツっと振動し、知らせてくれます。しかも、スマホのバイブと異なり、その振動は自分にしか分からないので、周りに迷惑をかけることがありません。このためにApple Watchに搭載されている機能が「触覚フィードバック」です。人間の皮膚にある受容器を刺激して、触覚や力覚、圧覚といった感覚(触感)を与える機能です。

 ここにきて、触覚フィードバックを取り巻く環境が大きく変わりつつあります。きっかけとなったのが、任天堂が2017年3月に発売した据置型ゲーム機「Nintendo Switch」です。Switchが備える触覚フィードバック機能は、これまでの電子機器のそれと比べて、「リアル」さが大幅に向上しています。例えば、本体に着脱できるコントローラーで、コップに氷を入れるといった繊細な触感まで再現できます。Switchでは、これまでは地味な存在だった触覚フィードバックを機器の付加価値を創出する最大のウリと位置付けています。そして、今後、車載機器や白物家電など幅広い用途で、Switchと同様に、リアルな触覚フィードバックの導入が急速に進んでいく見込みです。特集1「触覚フィードバック革命」では、電子機器のユーザーインターフェース(UI)に革新をもたらす触覚フィードバックの将来像を技術動向とともに議論します。

 特集2「データの付加価値を逃がさない」では、IoT事業で付加価値を自らに引き寄せようとするエレクトロニクスメーカーや自動車メーカーの動きをまとめました。センサーで取得したデータをデータセンターなどのクラウド側で処理するのではなく、センサー端末側で分散処理して、機器や自動車の価値を高める狙いです。このために、データ流通市場やブロックチェーンなどの仕組みの構築が進んでいます。

 この他、2大注目機器の分解詳報にもご期待ください。前述のSwitch、および米Microsoft社の新型ヘッドマウントディスプレー(HMD)「HoloLens」の分解について、他にはない深さで技術的な考察をお届けしています。