「ものづくり」から「ことづくり」へ。日立製作所が研究開発の役割を見直している。2015年10月、研究開発グループの一施設「社会イノベーション協創センタ」(東京・赤坂)で、社会インフラ分野における新しい事業機会を見出し、ビジネスモデルを顧客とともにつくる試みを始めた。顧客との「協創」のための独自開発ツールを駆使して、顧客の課題を共有、最適解をシミュレーションで確認する。

 一般に研究開発とは、新技術の発見を目指す研究と、新技術を使う製品の市場投入を目的とした開発を指す。新製品の完成をもって責任を全うしたことになる。今回の試みは、製品の完成よりも顧客の事業活動の成功に重点を置く点で、従来とは異なる。

 研究開発の役割は、事業化する将来において競合企業よりも高い価値を提供できるよう準備することといえる。電機メーカーは、大抵は技術で自社製品の将来価値に差を付けようとする。典型例は、HDDの売れ行きを左右するのが容量当たり単価と見込んで、安価な高密度化技術を開発することだ。