初めに述べておきたい。私はハードウエアの信奉者だ。エレクトロニクス製品の付加価値は、基本的にハードウエアによるものだと思っている筋金入りだ。10年以上前か、もっと前からだろうか、「これからはソフトウエアの時代だ。ソフトウエアがなければハードウエアはタダの箱だ」と方々で言われた。例えば、iPhoneが大躍進したとき、「それは米Apple社がApp StoreやiTunesなどのソフトウエア基盤を整備したからだ」とメディアはこぞって書いた。

 もちろん、それらの効果はあっただろう。けれども、その後、新しいiPhoneが出るたびに多くの人が熱狂した。App StoreやiTunesが充実したから、新しいiPhoneに買い替えたわけではない。iPhoneという新しいハードウエアが欲しかったからだ。米Microsoft社にしても、自ら2-in-1パソコンの「Surface」を開発・販売するようになっている。

 それだけではない。Apple社はiPhone用のICを自ら開発しているし、Apple社やMicrosoft社、米Amazon.com社にしても、せっせと独自のサーバー、すなわちハードウエアを開発している。でも誰も「ハードウエアの時代に戻った」とは声高に言わない。なぜだろうか。