9年間で激変した競争環境
 本誌で今回の特集(記事)のように幅広い読者を対象にアンケートを実施したのは9年ぶりです(2006年7月17日号以来)。この間に電子産業の競争環境は大きく変わりました。日本メーカーは薄型テレビのビジネスで韓国メーカーなどに大きく負け越し、“お家芸”だった携帯電話機もスマートフォンに取って代わられました。しかし世界の電子産業では今、センサーネットワークやディープラーニングといった新たな競争軸が生まれていて、日本メーカーの多くがこれらの動きを着実にキャッチアップしています。アンケートで明らかになった読者の意識と日本メーカーの注力分野はおおむね一致するものでした。日本の電子産業の成長の可能性を改めて実感しました。 (中島)

電子部品のハビタブルゾーン
 宇宙空間で生命が存在できる可能性のある場所を「ハビタブルゾーン」と呼ぶそうです。条件の1つは、水が液体のまま維持されること。私は、宇宙のどこに知的生命体がいるのかという議論で、この言葉が使われると違和感を覚えます。条件が、地球の生命体を前提としているからです。本号では「熱」について特集しました(記事)。電子機器の使用温度環境は、Si半導体の接合温度とはんだの実装温度が基準になっています。しかし、接合温度が高いSiC半導体や新たな接合方法がもっと使われるようになると、Siの利用を前提とした基準は崩れるかもしれません。取材を通じて、電子部品のハビタブルゾーンが広がる可能性を考える必要があると思いました。 (三宅)

ムーアの法則の延命策か新技術か
 今回の半導体新技術の解説記事(記事)では、2015年4月号の特集「さらば、ムーアの法則」の続編として、今後の半導体技術が具体的にどのようになるかを紹介しました。悩ましかったのは、新技術をムーアの法則の延命技術とみるか、革新技術とみなすかです。GAA(gate all around)はまだしも、チャネル材料のSiからの変更やトンネルFETは、ムーア時代との連続性が希薄です。ムーアの法則の定義や解釈を修正することで「いや、まだ終わっていない」と主張するのはどこか後ろ向きという印象をぬぐえません。GAAなども含め、延命技術とみなすより、これからの時代を拓く革新技術とみなすほうが前向きな気がします。 (野澤)