絵が動く魔法の箱
 漫画「ドラえもん」で、のび太の先祖がタイムマシンで現代にやってくる話があります。彼は現代を見て仰天し、自分の時代に戻ったときに、「鉄でできた獣や鳥」や「山より高い石造りの建物」を見たと皆に話します。前者は飛行機や車、後者は高層ビル。そして、テレビのことは「絵が動く魔法の箱」と表現しました。特集(記事)で取り上げた空間ディスプレーは現代における“魔法の映写機”と言えるかもしれません。テレビは我々に楽しい時間を与えてくれました。空間ディスプレーの開発が進み、人々に幸せな時間がもたらされること、できれば日本で花開くことを願っています。(田中)

電子部品業界の目に見えない参入障壁
 「彼らは、電子部品業界の厳しい試練をこれから受ける」。水晶発振器の代替を狙うMEMS発振器のベンチャー米SiTime社が最初の製品を出荷し始めた10年ほど前、電子部品メーカーの研究幹部が漏らした言葉です。Breakthrough(記事)の取材を進める際に思い出しました。汎用部品は、さまざまな環境・用途で使われるため、開発時には予想できなかった不良があるといいます。幹部の言葉からは、長い年月をかけ問題を解決してきた実績こそ参入障壁、とのメッセージが感じられました。SiTime社などは10年の試練を経てようやく本格参入の切符を手に入れたようです。(三宅)

仰げば尊し
 現代の人工知能(AI)を支える技術は機械学習です(記事)。その基本になる数学の1つがベイズ統計学です。論文を読む上で必要に迫られ、ネットにある解説や入門書を読み漁りました。その中で見つけた「名著」の紹介に愕然としました。私の大学院時代の指導教官が著し、当時はしっかり学んだはずの本だったからです。四半世紀もの歳月が理解を洗い流したのか、最初からちゃんと分かっていなかったのか。1つ言えるのは、AIの研究をしたかった自分が軽んじていた恩師の専門が、実はAIの重要技術そのものだった事実です。S先生、不肖の弟子をお許しください。(今井)