高まる機器メーカーの責任
 Liイオン2次電池の事故は、10年前にもありました。でも、その受け止め方は大きく変わったと感じます(Breakthrough「安全設計、待ったなし」)。10年前なら「不良を出す製造工程(電池メーカー)に責任がある」という見方から「いかに不良を出さない工程を実現するか」が主な論点でした。「Galaxy Note7」の事故後は「製造工程の管理、検証・検品、設計のツメが不足していた機器メーカーに責任がある」との見方から「いかに抜けなく管理、検証、検品するか」という論点に変わっているようです。契約社会となり、水平分業が浸透している表れでしょうか。(宇野)

歩くか、歩かないか、それが問題
 超小型電気自動車(EV)の特集の取材で当初気になっていたのは、歩く必要がなくなったら米国のように運動不足で肥満になる人が急増しないか、という点でした(Breakthrough「家電がクルマになる」)。一方で、行動範囲が広がることで、人はより活動的になるという調査もあるようです。もし荷物を運ぶ超小型EVが出てくれば、人はクルマから降りて、より長く歩くようになるかもしれない、と思っていたら、記事の編集途中でイタリアPiaggio社の子会社が、人に付いて動く搬送ロボットを発表しました。重い荷物を運ぶ苦痛は日常生活や旅行の中での切実な問題で、人が乗るよりむしろ大きな需要がありそうです。(野澤)

身近な量子ニューラルネット
 あり得る全ての結果が重ね合わさった状態から、徐々に正解が浮かび上がってくる。量子コンピューターの動作は、どこかしら人の思考と似ています(Emerging Tech「最適化問題を超高速で解く、量子計算機に新手法が急迫」)。筆者が記事を書くときも、言葉にならない混沌から文章が次第に形を成す様を身をもって感じます。最後のフレーズが決まったときなど、何らかのエネルギーが最も低い安定状態に落ち着いた気分です。解説に登場する「量子ニューラルネット」は、相互に接続したイジング模型がニューラルネットに見えるが故の命名でしょうが、本物の神経細胞の活動を言い当てているのかも。ただし記事の場合は大きな相違点が1つ。読者の「評価関数」は、この小文に何点をつけてくれるでしょうか。(今井)