IoT化した家電分野の基盤を握る――。そんな壮大な構想を掲げるアプリックスIPホールディングスがその実現に向け、さらに一歩を踏み出した。家電をIoT化するIC群を開発したのだ。これを使って、すべての家電からの情報が同社のシステムを介して流れるという世界を目指す。

 アプリックスは、現在、家電メーカーに同社のBluetooth Smart(Bluetooth Low Energy)の通信モジュールを提供するビジネスを展開している。具体的には、家電機器の回路基板や配線から分岐した信号をデジタル化して、通信モジュールに入力する(図1)。通信モジュールでは、このデジタル信号に関連付けられた現在の状態や操作を対応のIDとしてBluetooth Smartのビーコンとして発信する。例えば、コーヒーメーカーの給湯ヒーターのスイッチを監視し、ヒーターのスイッチが切れたことをコーヒーが淹れ終わったと判断し、そのことを示すIDを発信する。スマートフォンではアプリケーションソフトウエア(アプリ)がこれを受け取り、コーヒーが淹れ終わったことを知る。アプリックスはこの受け側のアプリも開発して提供する。

図1 既存の製品をIoT化する
図1 既存の製品をIoT化する
Bluetooth Smartモジュールに、アナログとデジタルの入出力ができるチップを加えることで、軽家電を簡易にIoT機器化できるようになる。(図:アプリックスの資料を基に本誌が作成)
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 アプリックスの狙いは、このアプリに表示された情報をきっかけとして行われるユーザーの購買に対するアフィリエート収入を得ることである。例えば、ランニングマシンにBluetooth Smartのモジュールを搭載し、一時的に利用され、その後、使わなくなったことが分かったら、マシンに飽きたと判断し、新しいダイエット商品を提案するといったことをする。この提案に応じて商品が売れれば、そのうちの何割かをキックバックしてもらう。IoT化されていない家電にどんどんアプリックスの通信モジュールが搭載されていけば、同社の売り上げが伸びるというシナリオだ。